カフェ頼政道

「第34回 カフェ・頼政道」 12月 4日(日)

終了しました

 

「フィオリの会」による朗読会

1年前の11月28日以来のご来店! フィオリの会による朗読を再び味わえます。
長田弘、向田邦子、金子みす!ご、立松和平などなど…
静寂の中で胸に響く、人の声のあたたかさは、癒しの効果抜群です。
くせになりますよ。


「フィオリの会」による朗読会の感謝とお礼

12月4日は昨年に引き続きフィオリの会の皆さん(8名)の方をお招きしました。昨年もそうですが、非常にバラエティーにとんだ6作品を朗読して頂きました。
最初の作品は昨年も登場した長田弘さんの「人生は森の中の一日」。平易な言葉だけれど難解です。難解ですけれど惹きつけられます。

生きた時代が違うがゆえに父親に反発し続けた娘の亡父ヘの愛情が「字のない葉書」でうたわれる向田邦子さんの作品。小説を読むのと違う感情が湧いてきます。疎開から帰った妹を見て・・・「父が、大人の男が声を立てて泣くのを初めて見た」のところでじんと来た人も多かったのではないでしょうか。さて朗読された伊藤さんのお父さんはどのような方なんでしょう。

昨年は宇治を舞台にした万葉集でしたが、今年は京都を舞台にした物語。歴史のある町ですからもののけ物やや童謡のようなものまで「京都でみつけた物語」はたくさんあるのでしょうね。生まれ育った京都の町を目に浮かばせながら聞いていました。
次は詩人金子みすゞの作品、「りこうな桜んぼ」。金澤さんから詩人自身の薄幸な人生も紹介されました。それから歌も挿入されて心を打ちました。

今里さんの立松和平作「海の命」。ともに漁師の父と息子の話。かつては自然や風土が育てた父と子の関係が今では少しずつ希薄になってきたこの時代、そしてこれから私達がこのような物語になんど出会うことがあるのでしょう。
前回よりも今里さんの声が力強く感じました。話の内容は男の物語だからでしょうか。

最後はみんなで谷川俊太郎さんの「きりなしうた」。参加者みんな、声がよく出ていました。

実は当日のプログラムに、未公開の付録がありました。

朗読会終了後、フィオリの会の皆さんが私と藤井のためのまだ紅葉の残るカフェの坂道の途中で朗読会を開いてくださいました。 吉野 弘さんの詩、「祝婚歌」です。実はフィオリの会のみなさんの暖かい申し出に私たちは最初それをお受けするのを躊躇していました。そしてやはり朗読が始まって少しの間は非常に照れくさいものでした。しかし私たち二人と対面した皆さんの唱和された朗読が進むに連れて、予想外なことですが、私の胸は徐々に熱くなって来ました。そう感じたのとほとんど同時に、となりの嫁の普段と違う息遣いが、嗚咽が聞こえてきました。思ってもみないことでした。

フィオリの会の皆さんと私たちが同じ感情を分かち合えた一時でした。
まだ船出をしたばかりで宝物の少ない私達には坂道での朗読会はもったいないような出来事でした。宝物をありがとうございます。

この吉野弘さんの詩には著作権がないとのことなので掲載させて頂きます。

『祝婚歌』 吉野 弘

二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい
以上